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2014年3月22日 (土)

【全曲レビュー】エイジア「グラヴィタス~荘厳なる刻(とき)」(ASIA "GRAVITAS") CD+DVD 直筆サイン入りスリーブケース入り100セット限定盤

いよいよジョンウェットン大先生、カールパーマー、ジェフダウンズ、そして新加入サムコールソンによる待望の新生エイジアの新作グラヴィタスが世界に先駆けて国内盤先行で発売された。ワードレコーズの努力には感謝しなければならない。昔とは違って音楽ソフトではなかなか儲からない時代になった今、小さいレーベルのほうが微に入り細に入りファンの心を捉えるサービスをしてくれるから。下の記事で触れた通常盤フラゲに続いてワードレコーズ直販で100セット限定盤が届きました。

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メンバー4人の直筆サインは6月来日後に改めて送付されるとの事。

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そんなことよりも予告させていただいていた当ブログ恒例の全曲レビュー、いっちゃいます。愛情いっぱい、思い入れ全開で、全曲レビューと、今作の注目点を3点に分けての感想を詳述します。

【全曲レビュー】

① Valkyrie
先生自らレコーディング時より、New Asia Classicと表現していた今作のリードトラック。格調高さを感じさせるコーラスで始まり、ミディアムテンポで哀感を湛えたメロディが展開される。サムコールソンのギターソロも非常に曲に馴染んでいる。曲の構造はスクエアで落ち着きのある古典的で重厚なロックと言える。先生はこれをエイジアらしいエイジア曲と言いたいんだろう。個人的には弾けるようなポップ感覚であったり、メンバーそれぞれプログレ畑にいた出自を思わせるスリリングでトリッキーな要素であったり、荘厳なアレンジであったり、そういったものが4~5分に包含された曲をエイジアらしいと思ってしまっているので、そういう意味ではエイジアを好きな聴き手からするとそこら辺、エイジアらしさというものに若干のギャップがあるかも。この感覚のギャップについては後述する。もちろん名曲であることには違いない。ってか事前にサンプルとか、先行してラジオでオンエアされたりPVが公開されたりで期待全開で聴き過ぎてしまったので、今回待望の購入時点で既に飽きが来ているという、熱心なファンならではというか、あまりよろしくないですな、こちらの姿勢が(笑)。

② Gravitas
   (i) Lento
   (ii) Gravitas
今作の一番のお気に入りである2部構成のタイトル曲。先生はレコーディング時よりEpic Songが出来たみたいなことを言っていたがまさにこの曲のことだろう。ジェフダウンズ作と思われる荘厳なシンセの第一部Lentoで始まり、この時点でもう期待感全開。第二部Gravitasに入るとサムのエッジの立ったギターでコードカッティングが始まり、ギタリスト交代による新生面を感じることになる。ジェフのキーボードはハモンドオルガン系のヴィンテージな音色がロックのカッコよさを注入していて非常に効果的。先生の歌うメロディはこれまた哀感を湛えた素晴らしいメロディ、サビのヴォーカルとコーラスのアンサンブルはメロディアスでありながらも素人には簡単にすぐに真似して歌えないという凝ったメロディ展開。ここでも投入されるサムのギターソロは若さにまかせた速弾きではなく(それでも十分速弾きだが)音色、フレーズ共に歌心を感じる。荘厳で重厚でサビのカッコいいメロディ、私にはむしろこの曲のほうが New Asia Classicと思える。

③ The Closer I Get To You
静かに内省的に始まるバラード。先生の暗めの歌メロが延々続いて終わるなら捨て曲で終わったかもしれないが、サビに至ると一転して分厚いコーラスと雄々しく歌い上げるメロディが素晴らしい。この暗さと雄大さの対比が見事で、だからこそ前半の内省的なメロディが必要だったとまで思えてしまう。雄大なサビメロから引き継ぐサムのギターソロはやはり前曲と同様に歌心があってとても曲に馴染んでいる。いいぞ、サム君!

④ Nyctophobia
暗闇がどうのこうのっていう暗い歌詞のこの曲、軽快なリズムで展開されるメロディはちょっと今までのエイジアでは無かったかな。ここでもコーラスが効果的に使われる。サムのギターソロもこれまた音色、フレーズ共に嫌みが無く歌心に溢れている。個人的にはこの手の曲はあまり興味が湧かないが、「ニクトォフォォビィイアァーー」っていうリフレインがやたらと頭の中に残ってしまい、ちょっとウザい(笑)。

⑤ Russian Dolls
タイトル通り寒い景色にいるイメージで始まる美しいバラード。ここでもサビのメロディが秀逸。メロディアスでとても耳になじみやすいのだが2曲目のGravitasと同様に、じゃあ素人が簡単に覚えて歌えるかって言ったら結構難しい。今作は凝ったメロディが際立っている。ほら、キャッチーな曲って分かりやすくて私も好きだけど飽きがくるじゃない? でもそうじゃない、普通にキャッチーなメロディではないところが、これからも長く聴いていける気がして飽きがこない。また、この曲ではエイジア史上初めてベースソロがフィーチャーされていて、一応ベーシストの私としては(笑)、非常に興味深い。ベースソロと言ってもクリムゾンやUKでのスリリングでゴリゴリのプレイではなく、あくまでメロディアス。ずっと前にこういうの聴いたことあるな。トニーレビンのウォーターなんとかっていうソロアルバムだったかな。ベースでメインメロディを奏でて曲を展開させていた、あの感じ。本作で3番目に好き。一番はGravitas、じゃ2番目は? 次です。

⑥ Heaven Help Me Now
   (i) Wings of Angels
   (ii) Prelude
   (iii) Heaven Help Me Now
3部構成によるエイジアの様々な要素が詰まった名曲。これは素晴らしい。美しく分厚いコーラスからジェフの重厚なシンセオーケストレーションによる1部2部、そしてヴォーカル中心の3部が始まると②Gravitasと同傾向のカッコいいメロディ展開、そして出色なのはサビの分厚いコーラスとヴォーカルメロディ。これはまさに80年代産業ロックにあったいい意味でのゴージャス感、いかにも80年代的な鍵盤の音色使いをバックにこれまたよく練られたヴォーカルとコーラスメロディが何とも言えない高揚感を与えてくれる。ここでのメロディアスなサビメロも、だからといって素人が一回聴いてすぐに真似できるという意味のキャッチーさではない。本当に何回聴いても飽きないだろうし、5分と言わず8分でも10分でも続いて欲しいと思える。サムのギターソロはまたもや歌心全開の嫌みのない見事なフレーズだ。荘厳、重厚、凝ったメロディアスなサビメロ、ロックとしてのノリ、見事な名曲の誕生である。

⑦ I Would Die For You
先生とジェフによる87年にデモテープが制作された未発表の名曲(ブックレットには86年作と記載されているが)。我々ジョンウェットンマニアにはもうあの音源で散々聴いてきたので、このヴィンテージ感を感じるイントロには最初違和感を覚える。あの音源ではいかにも80年代的なスペーシーでエコーの効いた音像だったから。曲構造はあのままで再録音されたこのヴァージョンは、それでもサビに来ると分厚いコーラスがやっぱりあの名曲だなと再認識させてくれる。本作全体の流れの中では、少々安っぽい歌詞とか単純な曲構造から、無理に収録しなくても良かったのでは?と思う向きもあるが、ともあれ、マニア向けの商品にちょっと状態の良い録音のデモテープ状態で収録されていたものが、今こうしてエイジアの曲として世に出たことは良いことである。隠れた名曲がようやくめでたく成仏できたな。

⑧ Joe DiMaggio's Glove
前曲までの荘厳、重厚路線からちょっと趣を変えたとても優しく温もりを感じるバラード。ジョーディマジオといえば米メジャーリーグ、ニューヨークヤンキースの有名なスーパースターであったが、英国人である先生がジョーディマジオを知っていたのか、と意外な思いがしていた。ところが何のことはない、限定盤ブックレット収録のインタビューを読むと、ジョーディマジオどころかそもそも野球のルールすらよく知らないとの事。まぁいいや(笑)。ちょっと内省的とも思える始まり方の歌メロはサビに向かって青空を見上げるかのような明るく優しいメロディへと昇華していく。その暖かさが印象に残る。ここでもサムのギターソロは曲調をしっかり捉えた、無理も無駄もない音色の選び方とフレーズがグッジョブ。もう一回言う、いいぞ、サム君!! 先生とジェフのメロディメーカーとしての才能の勝利と言えるし、そのことに誰も異論は挟めないことを再認識できる名曲。

⑨ Till We Meet Again
本編最後はこれもここまでの荘厳重厚路線からは大きく逸脱した、とても開放的な明るい曲。タイトルは日本語で言えば「また会う日まで」ってことだろうが、日本の昭和の有名な歌謡曲(尾崎紀世彦だっけ?)とは少し違う。あれはいかにも日本的な哀愁がメロディに練りこまれていたが、こちらは極めて大陸的で豪快で明るい。もはやここに至って、エイジアっぽいかどうかは問題ではない。我らがジョンウェットン大先生が、「オォイェィ」とか「カモーン」とか言ってる時点で先生自ら気持ち良すぎて昇天されているのである。ここはファンなら共々に気分よく昇天すべきである。「オォイェィ」と「カモーン」が耳に残って仕方がない・・・。

以上、本編は全9曲。限定盤収録のボーナストラック3曲は上記録音からリズム隊を差し引いただけのイメージなので特に触れることはない。ここでは割愛します。また、限定盤のDVDについては、Valkyrieのプロモ映像と簡単なメンバーインタビューが含まれた映像、そして2013年9月のブルガリアでのオーケストラ共演ライブの抜粋3曲。Valkyrieプロモとメンバーインタビュー映像は事前にネットでも観れたし一部音楽番組でも観れたのでこれも特に触れません。ブルガリアのライブ映像抜粋については、サムコールソン加入後の初めての公式ライブ映像という意味では貴重ではあるがちょっと音質的にどうだろう。もしフル映像で商品化するならもう少しサウンド面のバランスやミックスを作り直してから出してくれると嬉しいかなと思う。

さて、最後に今回のエイジア新出発の新作にあたって注目すべき以下の三点についてそれぞれ総括として触れてみたい。

【セルフプロデュースの是非について】

今作は外部プロデューサーは起用せず、ウェットン、ダウンズ両名によるセルフプロデュース作品となった。同じレーベル所属でメンバーも被っているイエスではレジェンドなプロデューサー、ロイトーマスベイカーを起用しているのに何なんだと。前作が結構売れたイエスとは違うからまさかプロデューサーを雇うだけの予算をレーベルから与えてもらえなかったんだろうか、とか事前にはいろいろ考えてしまった。いざ音が我々の耳に届いた時点で、外部プロデューサーを立てなかったことの影響に触れたくなるのは熱心なエイジアファンとしては致し方のないところ。但し私自身はこの点はあえて前向きに好意的に捉えている。OMEGA、XXXと申し分のないプロデュースをしてくれたマイクパックスマンについては、ウェットン、ダウンズ、ハウから提供された楽曲を、外から見たエイジア、ファンがエイジアらしいと感じるエイジアサウンドとの親和性を考慮しながらプロデュースしてくれたと思う。象徴的なのはOMEGA収録の Holy War や End of The World であった。ハウ爺のギターを曲展開のあらゆる場面に絡ませ、カールパーマーのドラムソロプレイを入れ込む余地まで作ってくれていたから。でもそれはどうしても、エイジア過去作の何々に似ている、だからエイジアらしい、といったファンには嬉しいながらもある種後ろ向きな音楽の再生産が続くことになってしまう。それに対して裏事情はどうあれ、ウェットン、ダウンズのセルフプロデュースとしたことでウェットンが考える理想のエイジアサウンドが遂に姿を現すことになったと、その結果が今回の荘厳、重厚路線だと、そう捉えている。過去のエイジア的な、エイジア印なサウンドの再現を期待していた人なら若干の戸惑いが出てしまうのは仕方ないが私としてはマンネリに陥ることなく芳醇な香りのする作品を作り出せたことは成功だと思う。何よりも荘厳、重厚路線ながらメロディセンスの素晴らしさは益々確固たるものであることが証明されたから。

【ギタリスト交代について】

これはもう一聴して分かるし、聴かなくても予想はついていたであろうサウンドの変化の仕方である。曲が自作であろうがウェットン・ダウンズ作であろうが曲のあらゆる場面に自らのメロディアスなギターを絡ませていたハウ爺は、ウェットン・ダウンズの作り出す流麗なメインメロディにギターで強力に対抗できる稀有な才能の持ち主であったと思う。それが今作から無くなる以上は、サムコールソンという若い無名のギタリストがどこまでエイジアに自身の才能をインプットできるかということに注目しなければならない。今作をぼんやり聴いていると、ギターの存在感に気付かない可能性がある。それだけハウ爺のギターはエイジアの強力すぎるサウンドキャラクターだったから。しかし、上記の各曲レビューの如く一曲単位でじっくり聴いてみて欲しい。サムのギターは無理なく無駄なく嫌みなく、歌心を持って見事なギターソロをRussian Dollsを除くほぼ全曲に渡って封入してくれている。これは素直に評価してあげても良いのではないだろうか。もちろん次作があるならサム君による具体的なアイデアや曲の提供も期待したいところである。

【エイジア、アイコンの過去作との比較の是非について】

2006年のオリジナルエイジア復活とスタジオ盤制作時点から、どうしても出てきてしまう80年代のオリジナルエイジアとの比較、そして2000年代のウェットン・ダウンズによるアイコンとの比較論。ましてや今回はハウ爺脱退後であるから、もうここぞとばかりに作品が耳に届く前から「アイコンっぽい・・・」って言う準備をしていた、あるいは言いたくて仕方がない人もいたであろう。しかし、しかしである、そんなことを気にしたところでどうなるものでも無いし、私は今回は、何々に似ている・・・・という聴き方はしないようにしていた。100歩譲ってアイコンやエイジアの過去作に似ていたとしても、それが何か悪いのか、って話である。似てると悪くて、似てなければ良いのか?って(笑)。じゃあ言うがエイジアにも似ておらず、アイコンにも似ていなかったジョンウェットンの最新ソロアルバム RAISED IN CAPTIVITY は似ていないがゆえに最高の傑作であったと言える人が何人いるのか?って。だからそんなことはどうでもイイのである。何々に似てる、似ていないの問題ではない。今ここにエイジアとしては初めての、荘厳かつ重厚路線に踏み出した新エイジアサウンドを純粋に楽しみたいと私は思っている。

以上、6月にはジャパンツアーもあるが未だアメリカツアーが発表されていないのが少々不安なところ。80年代エイジアの、アストラ発表後のツアーなし、そのまま自然消滅なんてことにならないよう我々ファンは大いに盛り上げていきたい。

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