« STEVE HACKETT "GENESIS REVISITED : LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL"(DVD+2CD) | トップページ | BSフジ「伊藤政則のロックTV!」(7/19 27:00放映分) エイジア来日特集 »

2014年7月19日 (土)

【全曲レビュー】イエス「ヘブン&アース」(YES "HEAVEN & EARTH") 初回生産限定盤

2008年にジョンアンダーソン抜きでの活動継続を選択し、絶えることなく意欲的な活動を展開してきた現行イエスが通算21作目、2008年以降で2作目、ヴォーカリストがベノワデビッドからジョンデイヴィソンに交代してからの初の作品となった最新作ヘブン&アースを遂にリリース。

前作フライフロムヒアがトレヴァーホーンプロデュースによる極上の音質によりドラマ期イエスの継続発展系と言える内容で、以外と言っては失礼だがビルボードTOP40に入る大ヒットとなった。その意味で今作は売る側も聴く側も楽しみ倍増で満腔の期待を込めての新作であったのではないか。私としても今年はエイジアのグラヴィタスもあり、そしてイエスも新作を出すという事でこんなにめでたい年はない。このブログでもワクワク全開で全曲レビューを敢行するつもりであったが・・・・・。

国内盤発売日7/16の前日にはタワーレコードオンラインから近所のコンビニに到着していたのでフラゲしてこれまでに通勤の行き帰り含め計7周聴いた。ところが1回目聴いた時点でブログに記事を書くのが気が重くなった。書けば酷評するかもしれないと思った。酷評すればレーベルさんの営業妨害になりかねないし。そんな事は個人のブログなので気にする必要もないのだが結構この拙ブログがどんな取り上げ方するのかをある意味楽しみにしている方もおられるようだし、躊躇ったまま3日経ってしまった。何とか7周聴いた時点で出来るだけ率直に冷静に書いてみたい。

Img_1706

今回はロジャーディーンのジャケが非常に美しい。前作フライフロムヒアのジャケも素晴らしかったが今回もイマジネーション溢れる氷柱をモチーフにしたジャケが紙ジャケに映える。ジャケだけの為にあとでLPレコードも買おうかなと思うくらい。

Img_1709

国内初回限定盤の中身。ジャケのポスター、細かく折り曲げられるとちょっと萎えるけど。コースター、実際に使わんだろう。ICカードステッカー、要らんけど・・・。

Img_1707_2

今回は店特典を比較して、DUではなくタワーで買った。タワーレコード特典はジャケデザインのクリアファイルとステッカー。

さて、躊躇した本編のレビューを。

① Believe Again [Davison/Howe]
オープニングは美しく優しいメロディとフワフワ感が印象に残る、と言うかそれしか印象に残らないお花畑サウンド全開の美麗な曲。この世界観は新ヴォーカリスト、ジョンデイヴィソンが持ち込んだものなのか、もしそうだとしたらその天国ヘブン状態の感性はジョンアンダーソンを超えている。今更ながらジョンアンダーソンに似すぎている歌声である。スティーブハウのギターはスティールギターで浮遊し、ジェフダウンズの鍵盤も天空を浮遊している。それをゆったりと支えるクリススクワイアのベースと、完全に個性を消したアランホワイトのドラム、すべての楽器が浮世離れした美しいメロディを際立たせるために一丸となっている。作曲クレジットがデイヴィソン/ハウ爺となっているが主導権はデイヴィソンか。ハウ爺は間奏の細かいギターフレーズの部分を提供したんだろう。アルバムオープニングのつかみとしてOKかどうかは何とも言えないが、こういう曲も悪くはない。ただしこの後にどのような楽曲が収録されているかにもよる。勿論イエスらしいカッコ良さ、スリリングさも含んだ曲も後にはあるんだろうなと思っている分には・・・・。

② The Game [Squire/Davison/Johnson]
作曲クレジットを見ると、おそらくクリスが2006~2007年ごろに書き溜めていた曲かも知れない。これまたハウ爺のウネェ~~っとした浮遊感あるスティールギターのフレーズで始まるが本編に入るとなかなか軽快でメロディアス。ただ、これは今作プロデューサーのロイトーマスベイカーの音作りなのかビリーシャーウッドによるミックスの仕業なのか、ドラムが軽い。そこが個人的には勿体ない。アレンジそのものは非常に押し引きをうまく転換させながらワクワク感をも感じるアレンジなだけに、結果としてサウンド全体が軽いことがせっかくのアレンジの良さを消してしまってるような。

③ Step Beyond [Howe/Davison]
イントロのジェフのキュートなイントロがまるでバグルス的過ぎてイエスになじまない。バグルス+イエスのサウンドの相性の良さはドラマやフライフロムヒアで証明済であるが、コレはちょっと個性が偏り過ぎ。もっとも作曲はハウ爺/デイヴィソンなのでハウ爺がたまにやらかす軽~い小曲をイエスに持ち込んだんだろう。こういうのはハウ爺のソロ作でやってくれればいいんだけど・・・。エイジアに持ち込んだら即却下であっただろう。

④ To Ascend [Davison/White]
これもゆったりした優しいメロディの牧歌的な曲。アルバムに一曲くらいは箸休め的にこういう曲はあってもいいとは思うんだが2曲は要らんぞ、と先に言っておこう。

⑤ In a World of Our Own [Davison/Squire]
う~ん、いかにもクリスがたまに作りそうなリフ。これも印象としてのんびりした曲でメロディが悪くは無いんだがクリスの捨て曲っぽい煮え切らないメロディ。前曲に続いてコレと言うのは個人的には厳しいぞ。

⑥ Light of the Ages [Davison]
デイヴィソン一人のペンによる曲。イントロが意外に長いのが退屈で、ようやく歌メロが始まってもこれまた退屈。メロディ自体は悪くないんだが・・・・。

⑦ It was All We Knew [Howe]
イントロの軽快さと各楽器が音を重ねていく感じがちょっと期待させてくれるんだが、なんだろう、存在感が薄い。歌が始まると④⑤⑥と続く、メロディは悪くないんだがなんか退屈っていう・・・。ただハウ爺の曲だけあって独特のトリッキーなギターフレーズの展開があってそこでまたオッって思わせるんだが、また歌メロに戻ると薄口のアレンジで退屈になる。

⑧ Subway Walls [Davison/Downes]
ジェフダウンズが持ち込んだ部分と思われるイントロの荘厳系キーボード、2014年型エイジアそのもの(笑)。そのままジョンウェットンのヴォーカルでグラヴィタスとかヘブンヘルプミーナウが始まったとしても違和感を感じない。約9分の曲中ではなんとジェフのオルガンソロが渋くインプットされていて、あ~~、なんだっけイエスでこの感じ・・・って思ってるうちにトニーケイにたどり着く。なんだトニーケイじゃ嬉しくないなと。クリスの地味ぃなベースソロ的な部分も一瞬あるしハウ爺のギターソロもあるし、アルバム最後のこの曲に至ってようやく耳を奪われる魅力が。しかしなんか最高潮までの盛り上がりを感じることなく終わるところが物足りないかなぁ。

以上、本編は全8曲。国内盤ボートラは④のアコースティックヴァージョン。ここでは割愛。

さて全体を俯瞰してもう一度感想を述べるならば、なんか薄口だなぁと。なんでなんだろう?? 第一印象もそう感じたし7回聴いてもそう感じた。薄口。イエスファンの大多数がガッツポーズで支持するサウンドではないと思う。ヴォーカルはジョンアンダーソンのイメージそのまんまだし他のメンバーはイエスを支えてきたメンバーたちだしイエスっぽいなとも思うんだが。

自分なりに考えてみた。パーツはとてもイエスっぽい。イエスサウンドを構成してきたパーツそのものが今作にもほぼ全面的に投入されている。ジョンアンダーソンそっくりのヴォーカル、ハウ爺のギター、クリスの独特の響きのベース、そつのないジェフの鍵盤、イエスにあるべきものはあると思う。アランのドラムがちょっと存在感無いけど。にもかかわらず薄口だなあと思うのは、今作ではそのイエスサウンドを構成するパーツが、「重ね合わせ」られていない、「つなぎ合わせている」サウンドになっていて、それで結果として「薄口」な印象なのかも。そして氷の上をスピーディに滑るようなスピード感とロックっぽさが希薄になってしまっている。また上でも述べたがアランのドラムの存在感の無さも大きい。ただしこれはミックスの問題かもしれない。

これらのことはメンバーが指向したのか、プロデューサーのロイトーマスベイカーが指向したのか、またはビリーシャーウッドがミックスしたらこうなってしまったのか、そこらへんはメンバーやロイトーマスベイカー自身のコメントを聞いてみないと分からない。今回はどのメンバーがイニシアチブを取ったのかも、そのサウンドからは非常に見えにくい。意図してイエスとしての新機軸を打ち出したのなら、そのメッセージをインタビューでもなんでもいいから強固に発してくれないと聴く側は戸惑う人が多いだろう。また、国内盤のライナーには下記のような記述がある。

Img_0795

当初はプロデュースもミックスもロイトーマスベイカーと公式発表されていたが、土壇場になってビリーシャーウッドがミックスを担当して、アレ?っと思った人もいただろう。なぜロイトーマスベイカーのミックスが破棄されたのか、ロイのミックスはどんなサウンドだったのか、こうなってくると非常に気になる。

というワケで過去のどのイエスサウンドとも似ているようで異なる今作、私の口からどうと決めつけるにはまだ早い。メンバーのコメントをよくよく聞いてみないとアレコレ言いたくないのが正直なところ。もしかするとライブではドラムやベースがガンガン鳴るから違って聴こえるのかもしれないしな。

|

« STEVE HACKETT "GENESIS REVISITED : LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL"(DVD+2CD) | トップページ | BSフジ「伊藤政則のロックTV!」(7/19 27:00放映分) エイジア来日特集 »