2016年3月26日 (土)

ザ・シン・ウィズ・ムーン・サファリ 「トラストワークス」 (THE SYN "TRUSTWORKS")

民間人として会社組織で仕事をしていると、それが責任ある立場であればあるほど必ず直面する悩みってものがある。数字を追及するために気持ちとか心とかを犠牲にしなければならない場合があったり。曲がりなりにもそういう「立場」ってのを経験してきた私は、世の中の様々に話題になる事象について、一般の立場から湧き上がる批判や怒りの声も分かるんだが、その反面で批判覚悟でそうせざるを得ない苦しい胸の内を抱えて事を進めなければならない立場の人がいることに結構同情的になったりする。上から目線で申し訳ないが部長の辛さは部長にしか分からないし取締役の辛さは取締役にしか分からない。社長の辛さは社長にしか分からない。その立場で闘ったことの無い人は何とでも言うもんである。なので論理の出発点の正邪をしっかり見極める目を養う意味で何歳になっても読書したり地域でいろいろ関わったりして学ばなければならない。

オッと、話が壮大にズレてしまったが、売る側の数値目標達成の為の努力が見え見え過ぎてコノヤロウと思いつつ、そっち側の方々も大変なんだろうなと思ってしまったのが掲題のザ・シンの新譜である(笑)。ウィズ・ムーンサファリ(笑)。分かる、分かるよ。一応ムーンサファリが制作に深く関わっているから、ザ・シンの新譜なんだけども日本国内ではザ・シンとしてよりもウィズ・ムーンサファリって表記してしまった方が売上UPのためには明らかに効果的である。現にこの私も「ウィズ・ムーンサファリ」表記にホイホイ釣られて予約購入してるんだから(笑)。

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ザ・シン、イエスの前身バンドとしてクリススクワイアとピーターバンクスが在籍していたことでイエスファンの間で有名というか、逆にイエスのマニアしか興味を持たないであろうこのバンド、2000年代になって復活して現在も細々と活動中である。しかしイエスマニアの私でさえ最早コレクションの対象ですらなくなっている。だって今はピーターバンクスもクリススクワイアも逝去して居ないんだから。なので復活時の過去音源&クリススクワイア参加の新録のCDはコレクションとして購入したけど(↓)、

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それ以降はスルー状態。上記CDでさえ、正直退屈な英国ビートミュージックで今回ブログの為に取り出すまではCDラックの肥やしになっていた。ラックの何処にあるのか探すのも大変だったくらい。その後はフランシスダナリーとそのバンドメンバーをバックに作品制作をしたりしていたそうだがそれもスルー、そして今回の新譜である。事前のPVを聴いたらムーンサファリ色が出てる気がしたので益々期待値が高くなり大喜びで聴く前から歓喜してフラゲ。早速全曲レビューするつもりで聴いてみた。

ん?、いや次、ん?、いや次こそは、ん?・・・と思っているうちに聴き終わってしまった。

いやちょっと待て、最初の一回はウォーキングしながら聴いたから、ちゃんと落ち着いて聴けば奇跡が起こるかも知れないと思い、もう一度じっくり部屋で聴いた・・・。

その結果・・・、全曲レビューは断念(苦笑)。期待値が高すぎた。ムーンサファリの2014年の単独での初来日公演、アレは本当に素晴らしかった。私の生涯ベスト5に入るライヴだったと思う。次なる新譜が期待される中での今回のザ・シンの新譜への参画、自分で勝手に「コレは実質ムーンサファリの新譜に値する」と天にも昇らんばかりに期待し過ぎてしまっていた。そんな自分が悪いのだ・・・。

コレはもう普通にザ・シン。フラワーキングスのヨナスレインゴールドとムーンサファリが色付けをしているのはハッキリ分かるものの、残念ながらスティーヴナーデリの歌うメロディラインに豊かさや色彩感が乏しい。なので折角のムーンサファリサウンドの色付けが役に立っていないというか効果を表していない。ムーンサファリ目当てで聴くと非常に残念な音楽になってしまっている。速やかに自分の頭の中で「コレはムーンサファリの新譜では無い」という当たり前の事実を再認識しなければならない。でないと納得がいかない(笑)。

ザ・シン、あるいはスティーヴナーデリのことが好きで好きで仕方ない人には申し訳ないのだけれど、スティーヴナーデリの歌うこの突き抜けきらない素朴過ぎるメロディ感覚がどうしても私としてはハマらない。声質は悪くないというと言い方は失礼だが、歌い方次第ではジョンウェットンクラスの良い声をしていると思う。だけども歌メロにセンスが無いのか、せっかく良い曲を作ってもメロディに煌めきが無い。歌メロが地味だからスティーヴナーデリの声もただの地味声にしか聴こえない。歌メロに煌めきがあると一躍ジョンウェットンクラスのヴォーカリストになれる気がするんだけどな。国内盤ライナーを読んでいると、どの曲だったかハード目の曲で言うに事欠いて、エイジアのような曲、などと書いておられて、ライナー書く人も大変だなと同情してしまった。

ここまで言って最後にフォローするのも変だが、唯一良かったのは14分超えのラスト曲Seventh Day of Sevenの後半4分くらい延々と続くギターソロ。この地味な冴えないヴォーカルが無いところでムーンサファリのギタリストが奏でるギターソロ部分は素晴らしい。絶品のメロディとアレンジである。これが無ければ近日中に中古屋さん行きになるところだった。このラスト曲の絶品ギターソロは持っていたいと思えるので当面手放さないだろう。

ということで、ムーンサファリの新譜はヒムラバッケン2とかになるのかな。今回のザ・シン(ウィズ・ムーンサファリ)を聴いた人ならば、サファリの純粋な新譜への渇望感が大いに増幅するという二次的効果をもたらしたという意味で、国内レーベルさんの「ウィズ・ムーンサファリ」大作戦はもしかしたら成功したのかも知れない(笑)。

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2014年10月24日 (金)

ムーン・サファリ 2014年来日公演初日 (MOON SAFARI MEGA MOON JAPAN TOUR 2014 : Oct 21, 2014 @ TUTAYA O-WEST Tokyo)

どれだけ待ち望んだか分からない、現役最強の待望のムーンサファリ単独で初の来日公演、渋谷のO-WEST初日に参戦。2013年のヨーロピアンロックフェスには行かなかったので、っていうかその頃ムーンサファリの事を露ほども知らなかったので、あとになってそのフェスでムーンサファリがもの凄い大喝采を浴びたことを知り、いきなりチェック開始してまだかまだかと単独来日を待ちわびていた。来日が決定して、椅子に座れる初日のVIPパッケージ抽選を申し込んだがハズレ、初日の一般発売を例によってディスクユニオンに朝7時から並んで何とかゲット。それでは恒例の参戦レポを。

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2014年10月21日(水)、ムーンサファリの来日公演としては2度目、単独としては初となる来日公演の記念すべき初日のこの日、相変わらず続く仕事面での悪戦苦闘の中でなかなか楽しみなワクワク気分を味わえず定時で上がれるかどうかハラハラするという展開。この日は早出シフトだったので定時で上がれる場合は余裕で渋谷に到着できるはずであった。目論見としては開場前に到着し、開場と同時に物販に突撃してライブCDを買ってCD購入先着特典のメンバー6人サイン入りポートレートをゲットする、そんな目論見は業務の悪戦苦闘の末、脆くも崩れ去ってしまった。夕方頃になってガンガン業務が立て込んでしまい結局早出シフトの早上がり定時で上がれず半端に残業。何とか仕事を終えて大急ぎで渋谷へ。駅に着いた時点で既に開場時間をかなり過ぎていた。18時20分過ぎにO-WESTの前に到着。

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そう言えばこの場所、94年のジョンウェットン大先生のソロとしての初来日公演で来たよなぁ、あれはWESTじゃなくてEASTだったかなぁと思い出しながらここでバカを見てしまう。このWESTは初めてなもんで入り口が分からない。ここか?と思って進むと関係者入口だったりするし、そのそばを見てもコンビニの入り口だし、どうなってんだと。似たような周囲の建物(EAST?)のほうへ行ってみたり、挙句はラブホテル街へ進みかけたりというお約束のようなボケっぷりをカマしながらウロチョロ、ウロチョロ。元のコンビニの方へ戻ってきて2Fに行く階段があることにようやく気付いて入場。場内に入ってみると既に物販は長蛇の列。並んでは見たものの案の定、先着のサイン入りポートレートは無くなったとの事。残念無念。どうもここのところ運が無い。余計なところで使い果たしているようだ。

まあいい、大事なのは音楽だと気を取り直す。大阪から参戦された馴染みのマイミク某Zさんと遭遇。なんとVIPチケット抽選で当選していたそうで羨ましい限り。終演後はミート&グリートだから。ていうかエディジョブソンのファンミーティングの時も大阪から来られてたよなぁ、すげーバイタリティだと感心する。とりあえずワンドリンク500円のカウンターへ行き、500円でいろはすはちょっとアレだなぁと、珍しくアルコールを選択。缶酎ハイをもらってグイ飲みする。仕事は早出続きだしちょっと疲れもあるので椅子に着席。疲れてるところで缶酎ハイを飲み、そして場内に流れる開演前BGMはよりによって2014年最高品質のヒーリング効果抜群のイエスのヘブン&アース。あの抑揚のないヒーリングミュージックが缶酎ハイを補給してしまった疲れ気味の体と心に染みわたり過ぎる。眠い・・・・。

寝落ちしそうなところで後方から聞き覚えのある女性の声が。チラ見するとマイミク某Iさん。京都から参戦。実家は私と同じ京都亀岡。「なんや、また来とんのか(笑)」と軽口を叩きつつ目を覚ます。前置きが長くなったがそろそろ開演時間が近付く・・・。

19時ちょうど、見事に定刻通りにメンバー登場。10分15分遅れて開演する大御所バンドとは違う。いい心掛けだ。まずはフロントの3人が登場しいよいよスタート。オープニングはLover's End Part 1。それではセットリスト順に一曲ごとにレポいきます。

Lover's End Part 1
大傑作LOVER'S ENDのオープニング曲からスタート。静かな前半部を見事なヴォーカルハーモニーで歌い上げる。噂通りライブにおいても美しい完璧なハーモニー。早くも涙腺がヤバくなる。

A Kid Called Panic
フロント3人だけのアレンジで美しくしっとり始まった前曲に続いて後ろの3人も登場し、再びLOVER'S ENDアルバム最高の名曲が力強くスタート。あの独特のイントロの一音一音から躍動感あふれるアレンジがライブでも完璧に再現されワクワク感全開の演奏。観ているこちらも自然と体を揺らしながら笑顔になってしまう。演奏している本人たちも楽しそうで特に鍵盤&リードヴォーカルのお兄ちゃんは鍵盤弾く、歌い上げる、ピョンピョン飛び跳ねる、といった具合で元気元気。本当に素晴らしい。前向きなメロディと完璧に再現されるヴォーカルハーモニーが個人的に仕事の辛さも忘れさせてくれるようで、おぉ~、また危ない、涙腺が・・・・。

Too Young To Say Goodbye
最新スタジオ作ヒムラバッケンからの実質オープニング曲、これまた素晴らしい。ヒムラバッケンでは個人的にちょっとドラムの音が引っ込み気味に感じてミックスに不満があったがライブではその不満は解消される。ドラム、ベースの力強い響きがこの曲本来の素晴らしさを増幅させる。そして何とも言えない郷愁を誘うギターの音色とメロディ、そしてここでも見事なヴォーカルハーモニー、もうダメです涙腺が・・・。

Heartland
いやもう前半からクライマックス全開。ここで早くも個人的に一番好きな曲ハートランド。最高にワクワクするアレンジが堪らない。あの楽しくワクワクする分かりやすいギターとキーボードのユニゾンで奏でていくメロディも目の前で再現され、ほとんど夢見心地。もう目に涙が溜まって前が見えなくなりそう。

Megamoon
今回のツアーをメガムーンツアーと名付けているだけに、バンドとしてはヒムラバッケンの最重要曲との位置づけなのだろう。なるほどライブ映えする。ジェントルジャイアント的とかクイーン的とかいろんな言い方があるんだろうが自分としてはムーンサファリに対してそういう評論の仕方は止めている。理由は後で述べる。とにかくこの曲もドラム、ベースを中心とした複雑なリズムと次々と変化する展開が見事で、鉄壁のアンサンブルを見せつけてくれた。今更ながらだがメロディとヴォーカルハーモニーだけのバンドではないのだ。

Red White Blues
再びヒムラバッケンから。ちょっとフロントのリードヴォーカルの人が弾くアコースティックギターの音が聴こえ難い気がしたが気のせいか。静かに美しく始まるこの曲も途中からギターの美しい音色と共に華麗に盛り上がる。うっとりとするようなこの曲もライブの中では良いアクセントになりうる。ただ、前の曲までが既に素晴らし過ぎたのでちょっと地味に感じたり。この曲がどうこうという意味ではないです決して。

Barfly
ヒムラバッケンで若干の新生面を見せてくれたへヴィな始まり方をするこの曲、しかしスタジオ盤のレビューでも書いたが途中からサファリらしい素晴らしくメロディアスで爽やかな展開になる。もううここら辺になると素晴らしい曲が続き過ぎてある種の放心状態。いい意味でだんだんボーッとしてくる。

Cross The Rubicon
LOVER'S ENDで一つのハイライトでもあるこの曲、またこれが美しい。イントロの美しさとそれに続くヴォーカルハーモニーの美しさ。もうなんかさっきから同じことばっかり言ってるか?(笑)。いやホントに美しく完璧なんだからしょうがない。曲後半のギターが奏でるメロディはこれまた絶品。このギタリスト、マジで表現力が素晴らしい。

Lover's End Part 3
「次が最後の曲です」的なMCが入る。エェーッ、まだ9曲目やで、って空気が会場に漂うが実はアンコールがエラく長いことに後で気づく。いやいやそれよりこの24分に及ぶムーンサファリの魅力をすべて詰め込んだかのようなLover's Endの第三章、これライブで聴くととんでもなく素晴らしい。鉄壁のインストアンサンブルの上に、まぁ次々と溢れ出てくる美メロにこのバンドの無尽蔵のメロディセンスを感じざるを得ない。その世界に入り込んでしまった私は辛抱していた涙腺がついに崩壊。涙が溢れ出てしまった。泣いた泣いた。ピアノの何とも言えないメロディ、ギターソロのメロディ、ヴォーカルメロディとハーモニー、何回泣かしてくれんねんって。涙を拭いまくりながら通常セット終了。

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アンコールに答えてメンバーすぐに登場(笑)。

The Ghost of Flowers Past
セカンドアルバムのBLOMLJUDからバラードっぽい曲。これもメロディが素晴らしい。もうなんかさっき泣き過ぎて呆然としながら聴いてしまった。

Constant Bloom
ダメだってこれは、絶対泣くから。メンバー6人がセンターマイクに集まってそれはそれは美しいアカペラで、まるで天上で響くような美しい歌唱。この世なのか、あの世なのか、境目が分からなくなりそうな美しさに再び泣かされた。マジでダメだってこれは。

Methuselah's Children
BLOMLJUDと同じように前曲Constant Bloomからこの曲へ。最後の盛り上がり、完璧なインストアンサンブルに、完璧なヴォーカルハーモニー、これでもかのサファリの魅力と実力を大展開して遂に夢見心地の時間が終了。

以上、終わった時のこの幸福感は何なんだと。泣きに泣いたけど楽しかったし本当に幸せな気分になれるライブ、こんなライブは初めてと言っても過言ではない。今このブログを書いていても、思い出しながら泣けるし、思い出しながら幸福感が溢れてくる。

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このムーンサファリの音楽はどういう音楽なのか、今あるものの枠の中でカテゴライズしたがる評論家気取りに評論するならサウンドはイエス、ジェネシス的などと言えるかもしれない。またヒムラバッケンではジェントルジャイアント的、クイーン的要素も感じられたかもしれない。超強力リズムセクション、メロディアスで澱みの無いギター、センス溢れるキーボード、見事なヴォーカル&コーラスハーモニー、現役最強プログレバンドっていう表現もネットでよく目にする。しかしイエスを、ジェネシスを、ジェントルジャイアントを、クイーンを聴いてこの幸福感を感じられるか、多分違うだろう。ライブを観て聴いてそれは確信できる。

これはもはや「ムーンサファリ」という極めて強い記名性を備えた「ムーンサファリ」という音楽なんだと思う。いつまでも60年代70年代のバンドを追っかけている場合ではない。ましてやそのトリビュートを追っかけている暇があったら、この現役最強ムーンサファリサウンドを全身で浴びるべきであるとまで思ってしまう。70年代プログレ、ハードが大好きな自分がそう思うんである。当分の間、ムーンサファリの音楽しか聴く気がしない。それほど強いインパクトのあるライブだった。繰り返すが本当に泣けたし幸福感を感じた。

という事で、そろそろマジメにメンバーの名前を覚えないとな(笑)。エラそうなブログを書いて、フロントの真ん中の兄ちゃんとか鍵盤の兄ちゃんとか言ってたらアホかって話になるしな・・・。

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2013年9月 8日 (日)

MOON SAFARI "HIMLABACKEN VOL 1"

まさに待望の、と言っていいムーンサファリの新譜ヒムラバッケンVol.1、発売早々に買っていたけどレビューするのが難しいというかなんといっていいか分からなくて今日まで記事UPできずにいたけど、そろそろ行きましょうか。

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私はムーンサファリについては完全に後追いで、今年一月のフェスティバル前座での来日公演の評判をネットで目にしてから初めて3作目の "LOVER'S END" を購入し、更に来日公演のツイートまとめを読んで観に行かなかったことを猛烈に後悔するという、他にもこういう人いるんじゃないだろうか。

2作目のプログレ大作もまだ未購入ではあるが3作目ラヴァーズエンドの素晴らしさは特筆ものであった。おそらくこれからもライブで演奏されるであろう 'A Kid Called Panic' と 'Heartland' は早くもバンドの代表曲として認知されるくらいの傑作であった。ついつい今回の新作にもこのレベルの曲を期待してしまったのが、記事UPが遅れた理由でもある。

さて、ヒムラバッケンである。ライナーによるとこのタイトルの意味はスウェーデン語で天国の丘というような意味らしい。ジャケはラバーズエンドほどアレではないが相変わらずの無造作というか愛想の無さ・・・。曲ごとの印象を簡潔に述べてみる。軽めの全曲レビュー。

1. Kids

美しく穏やかなコーラスが期待を煽る、アルバムの序曲の趣き。

2. Too Young To Say Goodbye

前曲Kidsから続くこの曲は早くもムーンサファリらしさ全開の佳曲。ギターの美メロが高く飛翔し美しく駆け回る。このバンドは複数の人がリードヴォーカルを取るのか、前作のリードヴォーカルとは違う人がやってるような感じ。分かりやすいメロディと複雑なアレンジを無理なく融合する感じはこのバンドの持ち味だろうか、とにかくギターソロの美しさが最後まで印象に残る。前作ラヴァーズエンドの 'A Kid Called Panic' あたりの位置付けになろうかという名曲。でも 'A Kid Called Panic' には負けてるっていうか地味。

3. Mega Moon

あぁ~、こういう感じね・・・。こういう感じは個人的にはあまり好みではない。誰が聴いても分かるQUEEN風味。クイーンをあまり聴かないもんだから個人的に響かない。8分超の長さからしてバンドとしてはこういうのもやりたかったんだろう。バンドの振り幅を広げることに着手しているのかも知れないが、この手の曲はロビーヴァレンタインで十分に味わったのでもういいですって感じ。ゴメンナサイ。ちなみに私はハードポップの最高峰は今でもロビーヴァレンタインだと思っています。

4. Barfly

イントロの出だしがへヴィな重たいリフで始まる。正直ムーンサファリにこういうのは期待していないのでiPhoneで聴いてるとスキップしそうになる。しかしそれが現代の音楽リスニングの良くないところ。最初はスキップしまくっていたのだがここ数日お出かけ時やウォーキング時にちょっと辛抱してスキップせずに聴いてみたら、何の事は無い、これがムーンサファリらしい名曲と言える内容。イントロの重さでスキップするのは勿体ない、その後に待ってるサファリらしさ全開のメロディアスで爽やかなアレンジは何度でも繰り返し聴きたくなるくらい。くれぐれもイントロだけで曲の印象を決めつけてはいけない。

5. Red White Blues

何とも言えない憂いと甘酸っぱさを湛えた始まりの歌メロとそれを支える控えめかつ効果的なアレンジが素晴らしい。最初は地味な曲だなぁと思うかも知れないが聴けば聴くほど曲の良さがじわじわと心に響いてくる。ここでもギターのメロディが印象に残る。

6. My Little Man

ちょっと一休みって感じの小曲。ビートルズっていうかポールマッカートニーの作りそうな曲。

7. Diamonds

ポップで優しい、子供をあやすようなメロディのピアノとギター、でもその演奏は実際には難しいことをやってるんだろうなぁっていう、これまた複雑な曲を分かりやすく聴かせるサファリのある意味の凄みを感じる。ヴォーカルも本当にワクワクさせるようなメロディを奏でている。

8. Sugar Band

今作を締める10分近くの大作。静かで優雅なピアノのイントロから同様のヴォーカルメロディが重なり、そのあとちょっと壮大に展開しかける、このしかける感じ、壮大になりきらないところがウーーン残念。でも中盤のキーボードとギターによるインストセクションは一つの聴かせどころ。この手のプログレ的展開は最近の若いバンドは当たり前のようにさらっと消化するんだなぁ。今のイエスがもしこれをやったらそれこそ「全盛期を思わせる曲!!」とかいって絶賛されるだろう。更に曲後半には再び少し憂いを帯びた印象的なギターソロが登場する。いずれにしてもこれまた佳曲ではある。

9. Kids(Learning tracks)
10. My Little Man

最後2曲は国内盤ボーナストラック。ここでは割愛。

以上、ボートラ除けば全8曲。正直言うと最初の印象としては地味だなぁと感じる。地味だと感じるポイントは個人的に以下の2点。

・ラヴァーズエンドにあった 'A Kid Called Panic' 'Heartland' のようなつかみとして印象に残るワクワクするような躍動感に満ちた曲が無い。
・音質というかミックスのやり方の問題なのか、スネアドラムの音がサウンド全体の中に埋もれていて、これによって全体が地味に感じる。

この2点によって前作ラヴァーズエンドのワクワク感、豊かな色彩感が損なわれている。もっとも、バンドがそれを志したのならそれはそれでいいのだが。

但し、以上の印象は「最初の」印象である。聴けば聴くほどメロディとアレンジの素晴らしさは印象に残り始める。一聴して聴き流してはならない。結論として本作も我々リスナーがムーンサファリに期待する音楽を十分に体現してくれている傑作と言える。あとは今年来日したばっかりなのに早くも来日待望論が沸騰している来日公演、この発表をワクワクしながら待つのみである。

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