2016年12月31日 (土)

THE NEAL MORSE BAND "THE SIMILITUDE OF A DREAM"

誰でも出来ることなら好きなことを仕事にしたいと思うだろう。現実には好きなことを仕事にしてる人なんて殆ど居なくて、辛いことが多くて、それを口に出すか出さないかの違いはあれど、出来ればその現実を変えてでも好きな仕事をしてそれを生業としたいと、誰もが思うはずである。好きなことを仕事にしている人って、休みなんか無くてもイイくらい日々が楽しいと思えるだろう。しかし現実にはそんな人はそうはいないと思う。私も引き続き悪戦苦闘の中で、だからこそ人の心の痛みが分かる人間に成長しよう、もし倒れるなら前向いて倒れよう、などとカッコイイこと思いながら日々を生き抜いているのである。

世間では年末年始の休暇気分で過ごしている人が多いだろうが私は例によって土日祝日盆正月なんか一切関係ないシフト勤務な仕事なので、とっても平常運転モード(笑)。今日の大晦日はたまたま公休日だけど、明日の元旦はフツーに24時間勤務。なので今年もお世話になりましただの、明けおめだの、そういうアレをブログでもSNSでも書かない。

公休日の今日も朝ちょっとゆっくり目に起きて、午前中は休日の日課のウォーキング兼オカンに頼まれたスーパーでの買い物。そしてウォーキング中の約1時間40分で、好きなことを仕事にして、仕事を楽しんでいると思われる人の作品をみっちり聴いていた。ニールモーズである。ニールモーズバンドのCD2枚組新作、既に何度かウォーキング時に通しで聴いてるんだけども、なかなかブログで取り上げなかったのは、感想を書くのが難しかったから。でも何度も聴いたのでブログに書かないのも勿体ないし、年末のタイミングでチャチャっと取り上げておこう。

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ニールモーズについてはわざわざ解説の必要もないだろうが、元スポックスビアードの中心メンバーにして、一時引退の後にソロとして復帰してから現在に至るまでとんでもない勢いでクォリティの高いプログレ作を発表し続けている、まさに奇才である。先月のスポックスビアード奥本亮さんのライヴでも仰っていた、まさにキ〇ガイのような才能の持ち主である。

ソロとしての復帰以降、ソロ名義、トランスアトランティック、フライングカラーズ、そして現在のニールモーズバンド名義と、次々と創造しつづける音楽は、凄く大ざっぱに言えばどれがどう違うのか分からないくらい。いや細かくは区別できるんだけど。言いたいのはどれもクォリティの高い、プログレ、ハード、メロディアス、ポップが融合した高水準の作品ばかりであるという事。それぞれの名義によってプログレ度が高かったり、メロディアスハード度が高かったり、そういう区別は出来ると思う。私はと言えば、その余りにもハイスパートなリリースラッシュに金と時間が付いていけず、作品は買ったり買わなかったり。ソロ名義は数枚買ったけど、買ってないものもある。トランスアトランティックは大体買ってるけど一番最近のライヴ盤は買ってない。フライングカラーズは1stは買ったけど2ndは買っていない。ニールモーズバンド名義の前作は買っていない。程よい言い訳としては、高水準なんだろうけどもう同じような作品ばかりなので新しいの買わなくても十分です、みたいな。

ではなぜ今回購入したのか。それは元ドリームシアターのマイクポートノイの事前の煽りコメントにノセられたから。ニールモーズのソロ及び各種プロジェクトのほぼ全てに全面的に関わり続けているマイクポートノイ曰く、今回の2枚組コンセプト超大作はドリームシアター時代を含めた自らのキャリア最高の作品、とのコメントに、そ~こ~まで言うなら、と喜んで購入したのである。今年はドリームシアターも自らのキャリア史上最高最長の2枚組コンセプト作「ジ・アストニッシング」を発売しており、マイクポートノイがそれを意識したかしてないかは分からないけど、私の方が意識して期待してしまった。アストニッシングはホント聴きまくったからなぁ。全力でレビュー記事()を書いたけど、未だに拙ブログのアストニッシングの記事へアクセスが多くあるみたいだし。ところでドリームシアターは、アストニッシングのツアーに一区切りつけたのか、2017年前半はイメージズ&ワーズの再現ライヴツアーが発表されてしまった。それはそれで楽しみだけど、アストニッシングの来日公演を期待していた私としては、エェ~~ッ、って感じ。

話を戻してニールモーズバンドの2枚組新作である。何度も聴いたのになかなかブログに書かなかったのは、今回も高水準の大変な力作なのはよくよく分かったんだけど、ドリームシアターのアストニッシングほどドハマリはしなかったから。コンセプトメーカーは当然ニールモーズ本人なんだろうけど、バンド名義だけあって作曲、アレンジのみならずリードヴォーカルなんかも各メンバーで分け合っているようだ。それもそれでOKだけど、自分の聴感上そこはあまり重要ではない。メロディ派の自分の感想を正直に言うなら、この2枚組100分超え大作は、オープニングのLongday~Overtureの2曲にすべて集約されている、そんな感じである。ニールモーズ節と言える分かりやすくキャッチーなメロディで、オォッ、って思えるのだが、その後はこの2曲で提示されたニールモーズ節が、アレンジを変え、転調しながら繰り返し登場するのである。しかもそれがCD2枚100分超に渡って。だからダメとか言いたいのではなくて、素晴らしいメロディがコレでもかと出てくるのは好きだし、ある意味プログレ作品の王道ではあるんだけども、同じメロディの変奏が100分超に渡って出てくるのはちょっとシンドイなぁって(笑)。ドリームシアターのアストニッシングも同様の作りだけど、美味しいメロディは一つではなく、異なった数種の美味しいメロディが2枚組全体に散りばめられていた。だから飽きなかったと思う。

決して本作を否定してるわけでも貶しているわけでもない。繰り返すけど大変な力作である。ただ、それだけの力作として印象に残るか残らないかという意味では、今作はそれこそCD1枚組60分前後にまとめてくれた方がもっと印象に残ったかなって、そんな気がするのである。

ちなみに本作をリリースしたニールモーズ及びマイクポートノイは、早くも今度はフライングカラーズの3rdとなる作品の制作に取り掛かっているとの事。ほんと仕事好きなんだなぁって、そういうオチである(笑)。

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2016年7月24日 (日)

アンダーソン/ストルト 「インヴェンション・オブ・ナレッジ」 (ANDERSON/STOLT "INVENTION OF KNOWLEDGE")

今年ほどイエスの「海洋地形学の物語」が注目を浴びる年もなかなかないだろう。既に現行イエスの夏のUSツアー及び11月の来日公演では海洋地形学の1曲目「神の啓示」と4曲目「儀式」の完全再現が出し物としてアナウンスされた。また先日ようやくスティーヴンウィルソンによるイエス作品のリミックスシリーズとして海洋地形学が近日リリースされることもアナウンス。リミックスされた海洋地形学がどのような新生面を感じさせてくれるかも楽しみだが、何よりボーナストラックとして、74年4月の欧州ツアーから「儀式」のライヴが収録されるのが個人的には大注目である。74年4月といえばリックウェイクマンが第一回目(笑)のイエス脱退を果たす直前であり、そのリックが演奏する海洋地形学のライヴが公式発表されるのも初めてである。

また、その注目の浴び方も様子見しつつの静かな注目ってところが、海洋地形学に対するファンの立ち位置を物語っているようで面白い。決して大盛り上がりでは無いのである。やはり正直なところ、海洋地形学が好きで好きでしょうがないっていうイエスファンがなかなか居ないのだろう。イエスのある一面を拡大させたシンフォニック傑作でもあり問題作でもあり、しかしファンの立場からの聴感上の問題として、眠い、冗長である、といった評価になってしまう。かく言う私も、ジョンアンダーソンがスティーヴハウをパートナーにして完全にイエスをコントロールした、ジョンアンダーソンの音楽的大冒険アルバムとして、作品としての存在感の大きさは感じるものの、じゃあ聴いてどうかといえば途中で寝落ちすることも多い(苦笑)。

今回は海洋地形学のレビューを書きたいわけでは無いのでこの辺で置いとくが、海洋地形学が今年注目を浴びるもう一つの要素が、今回取り上げる掲題のアンダーソン/ストルトのコラボ作品である。

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数か月前に突如としてジョンアンダーソンと、フラワーキングスのロイネストルトのコラボ作品がリリースされることがアナウンスされ、その組み合わせの意外さも相まって、いつの間にこの2人が?って思ったものだった。2年くらい前から時間をかけて極秘裏に制作がすすめられてたようで、ようやく表に出せる状態にまで持ってこれたのだろう。二人の相性としては最初は全く想像がつかなくて、リリースがアナウンスされて短いサンプルを聴いた段階で、これは面白いかも、と思って購入する気にはなったんだが、リリース仕様がどうなるのか色々と考え過ぎてるうちに少し出遅れてしまった。安全策でEU盤から1ヶ月遅れの国内盤を予約したんだが、EU盤を聴いた方々の感想を目にするうちに国内盤を待ってられなくなって、やっぱりEU盤も欲しくなり、とある時間のかかりそうなサイトで注文したんだが、案の定すぐには送られて来ず、結局国内盤の方が先にウチに届くという、何がやりたかったんだ私は?的な展開となってしまった。パッケージもEU盤のデジパックに対して国内盤はプラケと言うことで、両方揃ってからブログ記事書こうと思ったけどもうイイ。本日現在もEU盤は届く気配が無いので、収録内容は変わらないから国内盤聴いて記事UPである。

全曲レビューまではしないけど、自分なりに感じた点を掻い摘んで書いていく。当初、大作ばかり全4曲とアナウンスされた作品構成は、実際にはデジタル時代らしく少し細かくトラック分けされて全9曲として構成されている。しかし大曲4曲という枠組みは変わらないしジャケの記載にもその辺は強調されている。

さて、大作その一、Invention of Knowledgeの3曲にトラック分けされたトータル22分を超える曲は、もうこの最初の5分で、おぉー!まさにイエスサウンドが甦ったやん!と感じる人が多かったに違いない。掴みはバッチリである。しかしそれは往年のイエスサウンドが甦ったというのとは少し違うと思う。イエスサウンドではなく、イエスの海洋地形学のようなサウンド、と言うことに違いない。少なくとも私の印象はそうである。これは2曲目、3曲目、4曲目と聴き進めるほどにそう感じる。実際に海外では海洋地形学や、ジョンアンダーソンの1stソロのサンヒローを引き合いに出して売り文句としているようだし。

何ていうんだろう、ジョンアンダーソン独特のマジカルヴォイスと、ギター、鍵盤、ベースのフレーズの絡ませ方が、モザイクを隙間なく綺麗に組み合わせるかのような素晴らしい音の構築感があって、複合するリードパートのような面影まで感じさせてくれるところがファンを歓喜させる理由だろう。しかしイエスサウンドそのものとまで個人的に言えないのはやはり、氷の上を滑るかのような滑らかな疾走感が無いところが、イエスサウンドではなく、イエスの海洋地形学のようなサウンド、と感じる理由である。そしてその後は聴き進めるほどに、美しいシンフォサウンドではあるものの、ぼんやり聴いていると聴き流してしまったり眠くなってきたりするヒーリング効果まであって、この感じが海洋地形学を聴くときの感じと同じである。また一部のヴォーカルフレーズに重ねたコーラスは、それこそまさにジョンのソロ、サンヒローを思い起こさせる。

ジョンアンダーソンによる音楽的大冒険であったイエスの海洋地形学やソロ1stのサンヒロー、これらを見事に2016年にリフォームしたかのような音の構築感は、ロイネストルトが凄く頑張りましたーーー!ってことだろう。多分ジョンアンダーソンがイニシアチブを取ってソロ作品として制作すると、音の構築感がない、失礼ながら聴感上は退屈な作品になった気がする。イエスのファンでもあったロイネストルトだからこそ、あの音の構築感をイエス的なるものへの愛情を持って甦らせることが出来たんだと思う。トラック6のEverybody Heelsでは、そのロイネストルトがフラワーキングスでのギターソロを思わせる素晴らしいフレーズのギターが聴ける。

昔はアイデアを出したジョンアンダーソンを、優秀な楽器隊が自分たちの個性を割り込ませながらアレンジし、優秀なプロデューサーが制作する、その組み合わせでこそ実現したのがイエスサウンドであった。今回の作品は、ジョンアンダーソンのマジカルヴォイスを最高に引き立たせるために何が必要か、それを愛情持ってよくよく理解していたロイネストルトが作り上げたと言っても過言ではない。だからこそ結果として、よりジョンアンダーソン色の強いイエスサウンドとしての海洋地形学を思わせるサウンドになったんだろう。

海洋地形学を楽しくした感じ、ツイッター的に一言で言ってしまうとそういう事になる。

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2015年12月 1日 (火)

【Short Review 9】フライング・カラーズ 「フライング・カラーズ」 (FLYING COLORS "FLYING COLORS")

前後に何の脈絡もなく時々やってしまう「何を今更」シリーズ、フライングカラーズを今更ながらに購入。

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ドリームシアターを脱退後のマイクポートノイについては、自らが創立に関わったDTを脱退してしまったばっかりに何か心の穴を埋めるかのようにワーカホリック状態になっていて、もう全くフォローが追い付かない。それはスポックスビアード脱退後にソロとしてシーンに復帰して以来のニールモーズも同様。マイクポートノイとニールモーズはプログレ&HR/HM界隈では一番の働きもんだろう。トランスアトランティックだけは素晴らしい充実したプログレ作品を発表してくれていてどうにかフォローしているものの、それでも内容てんこ盛りのライヴ盤までは追い切れていなかったりする。買うだけ買って視聴していなかったり。メロディアス好きの私なのでニールモーズのソロも本当はフォローし続けたいがこれまた追い付かない。ましてやフライングカラーズなんてのは初めから私の購入ターゲット対象外になっていた。内容の良し悪し以前にもう聴く時間もないし話題を追い切れないから。

気が付くと既に2ndアルバムまで出しているとの事。たまたま他の何かを検索して調べていた時に偶然このフライングカラーズのレビュー記事を見てしまい、その一部に私の感性を刺激するフレーズが見当たってしまった。80年代ハード、ポップ、メロディが良い等云々。それなら1枚だけ聴いてみるかとタワーレコードの貯まっていたポイントを駆使してダーターで購入。もともと情報もそんなに追ってなかったので何となくの印象でこれもまたニールモーズとマイクポートノイの別プロジェクトなんでしょ? としか思っていなかったが実際には現ディープパープルのギタリスト、スティーヴモーズと、そしてニールモーズが曲作りの中心だという事らしい。そこへドラマーとしてマイクポートノイが合流と言う図式?

聴いてみて、一曲目の出だしで、あ、これは買って失敗したかな? と一瞬思ったがサビ部分がとても聴きやすくて、2曲目以降も落ち着いた80年代ハードロックとメロディアスな要素が融合していて確かに聴きやすい。少なくとも私の好みからすれば買って損したという気分にはならない。何かに例えるのはあまり好きではないが敢えて言うならトランスアトランティックの長尺で濃い楽曲をいい意味で短く薄めて大衆的にしたような感じ。それでも最終曲 Infinite Fire は12分に及ぶニールモーズ節満載の良質なプログレ作ではあるが。でもトランスアトランティックの20分超えや30分超えが当たり前の楽曲に比べれば短いし取っ付きやすい。その12分の Infinite Fire は、中間部にカッコいいギターソロやオルガンソロ、キメのユニゾンフレーズを挟みつつ、これでもかと繰り返される哀メロ美メロが素晴らしくて一度聴いたら忘れられない。最初からヘヴィローテになってしまった。

メンバーの顔触れが誰もが認める実力者ばかりなだけに、そういうミュージシャンがちょっと肩の力を抜いてキャッチーな曲を作ると、それはもう良いに決まっている。本当に実力のあるHR/HMグループほどバラードを作らせたら高品質のバラードを作ってしまうという方程式からしてもこの理屈は当てはまる。この作品は案外と言っては失礼だが、聴くこちら側も肩の力を抜いて楽しめる、でもしっかり作曲されていて演奏も充実していて、もしかしたら言う事なしの逸品なのかも知れないと、今更ながらに思えてきましたよ。2ndの購入も検討しないとな。

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2014年2月 2日 (日)

TRANSATLANTIC "KALEIDOSCOPE"(カレイドスコープ~万華鏡幻想 2CD+DVD) 

どうやら帯状疱疹も治ったみたいで仕事以外は体を休めることに専念するためにしばらく控えていたウォーキングをしてみたらシンドイのなんの。ほうほうのていで帰ってきた。途中でたった一駅分なのに電車乗って帰ってきたろかと思ったわ。齢を重ねていくとなんでも継続が大事なのが分かる。

さてこの一週間くらいでまたちょこちょこCDを買ったんだが予想外にハマったのが今回取り上げるトランスアトランティック4作目の新作カレイドスコープ。

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一応過去3作はきちんとリアルタイムで買っていたし特に1枚目2枚目はかなり好きだった。大変に良質でメロディのしっかりしたプログレを展開してくれていて、そのサウンドは私の好みからすればプログレとして理想に近いものであった。ただ、気に入ってるが凄く入れ込んだわけでは無かった。なぜかというと、どうしても頭の中でこれは各メンバーそれぞれが本拠地となるバンドがあってトランスアトランティックはあくまでもメンバーそれぞれにとってのサイドプロジェクトでしかないという意識があったから。ライブはやっていたけど来日はしていないし。もう何十年も前から実力あるプログレバンドにとって我が国日本は重要なマーケットであるはずだし、そうであるにも関わらず国内盤の発売が無い、もしくはだいぶ遅れて国内配給、そして来日公演もしないという事は、要はメンバーにとってもこのバンドで世界中を周る必要を感じないまさにサイドプロジェクトだったのである。

そういう意味では今回は半分くらいは位置付けが前向きになったかも知れない。マイクポートノイはドリームシアターを脱退していて本拠地と言える所属バンドが無い状態だし、ニールモーズも随分前にスポックスビアードを脱退して更には一時期引退状態だったし。考えようによっては今現在はこの二人にとってはトランスアトランティックが最も注力するバンドになっているから。そんなふうに彼らの抱える環境が多少なりともこれまでとは変わっていることもあって、こちらの向き合い方も若干本気度が増してくる。そして実際にこの新作カレイドスコープを聴いてみたら、その感覚と言うか予感は実感となってしまった。そんなわけで超気に入った時しかやらない全曲レビューを敢行します。

1. INTO THE BLUE
  ⅰ. Overture
  ⅱ. The Dreamer And The Healer
  ⅲ. A New Biginning
  ⅳ. Written In Your Heart
  ⅴ. The Dreamer And The Healer (Reprise)

いきなり25分超えの5部構成の大作。つかみのイントロはメロディアスでありこれまでのトランスアトランティックのイメージを踏襲しているが途中からしつこく展開される重めのリフはまるでヌーヴォメタル期のキングクリムゾンのよう。こんな感じの曲無かったっけ? Level Fiveだったかな? まぁいい、少なくともこれまでのトランスアトランティックではあまり無かった、あるいは強調されなかった曲調が展開される。ここで聴くのをやめて今作の印象をこんなものとして感じ終えてしまうと勿体ない。ちゃんと途中からメロディアスな展開に戻り最後は感動的に締める。メロディ派の私を決して裏切らない。でもしかし1曲目に関してはこのへヴィな展開が一番際立ったな。

2. SHINE

ニールモーズ自らのアコースティックギターの穏やかな響きに導かれて始まる優しさあふれる曲。フォーク調タッチという言い方はまたちょっと違うのかも知れないが少なくとも今までのトランスアトランティックのイメージを逸脱した新機軸。ただしこの流れがずっと続くのなら眠いなと思って個人的にスルー曲決定となるのだが、出色の出来なのは4分18秒くらいから始まるロイネストルトのギターソロ。素晴らしく胸に染み入るようなメロディでギターを泣かせまくる。この尋常じゃない情感を込めたギターソロでこの曲に対する評価は一変。しかもバンドはこの曲で最初のPVを制作しており、その本気度を我々リスナーは受け取らなければならない。

3. BLACK AS THE SKY

こ~れはもう、誰が聴いても気に入るだろう、トランスアトランティックに期待するサウンド、メロディが凝縮された逸品。これを20分とか30分に展開するのではなく6分43秒と言う彼らにしては短い時間に凝縮して見せたところがこれまた新機軸と言える。分かりやすいメロディとリズム、そしてワクワクするような躍動感を併せ持ったこの曲は、かといって細かいところではトリッキーな演奏をさりげなく挿入していてタダの甘ったるいポップでは終わらせない。この路線は今後も続けるのアリだと思う。お見事。

4. BEYOND THE SUN

天上から静かに光が差し込むかのような優しい曲。これだけ単品で聴くものではない。この曲は次の30分超えの最終曲KALEIDOSCOPEの序章と言う位置付けで聴けば、なお聴き応えがあるだろう。

5. KALEIDOSCOPE
  ⅰ. Overture
  ⅱ. Ride The Lightning
  ⅲ. Black Gold
  ⅳ. Walking The Road
  ⅴ. Desolation Days
  ⅵ. Lemon Looking Glass
  ⅶ. Ride The Lightning (Reprise)

最後は30分超え7部構成の大作。トランスアトランティックらしさと言うものを十二分に表現したトランスアトランティックらしい曲。聴きやすいメロディ、気持ちよく変化していくリズム、感動的な盛り上がりと、その全てが無理なくスムーズに展開されるという、彼らの作曲アレンジ能力が遺憾なく発揮されている。30分の長さをダレさせずにとにかく気持ちイイ。第2部のRide The Lightningの素晴らしさは繰り返し聴きたくなるし、またそれが第7部で再び登場して少しの哀メロを伴った感動をこれでもかとリフレインしてくれる。感動するこちらが泣き出すまで止めないぞと言わんばかりの繰り返しが嬉しい。いろんな音楽を聴いていてよくあるのが、凄く心に引っ掛かるメロディや展開があるんだがそれがすぐ終わってしまって、うーーん、もうちょっと続けてくれたら良かったのにって思う事があるんだが、このRide The Lightning最後のインスト部はそれを延々続けてくれるから非常に満足度が高い。満足度の高い状態で作品が終わるからそりゃもう名作だと言ってしまいたくなるってもんである。

以上、本編はみっちりCD収録時間一杯の75分以上で大満足。今までの過去3作だと1stが一番よく聴いたし2ndも同傾向だったが3rdの78分で1曲は敷居が高くて実はあまり聴かなかった。でも聴きなおさないとな。なんていうか今作はバンドの本気度を感じる。特にマイクポートノイには間違っても、何とかドリームシアターに戻りたいとかそういうことは思わなくていいからトランスアトランティックを自らの足場として頑張ってほしい。ドカドカうるさいツーバスがないプログレの本作での彼のドラミングは大変に心地よかった。

過去作は、

トランスアトランティック「が」プログレを演りました

だったけど、今作は、

トランスアトランティック「の」プログレを演りました

って感じ。これがトランスアトランティック自体の音楽だと胸張れる内容だし聴き手もそう受け止めてOKだろう。

これで終わりなんだけど全8曲のカヴァー曲を演奏したボーナスCDもなかなか良かったので軽く取り上げておく。

1. And You And I (YES Cover)

イントロが原曲のスティーブハウがアコギを爪弾くあの入り方ではない。イエスの70年代のライブでの導入の仕方で、それ使うかって思わずニヤッとしてしまう。キーは下げつつも70年代イエスサウンドをお見事に再現。イエスファンの私は実はこの作品を買って最初に聴いたのはボーナスCDのこの一曲目だったりする(笑)。更にいうならニールモーズ在籍時のスポックスビアードのSNOW限定盤で最初に聴いたのはやはりボーナスCDのイエスカヴァー、South Side Of The Sky だったりする。どうなのそれって(笑)。

2. Can't Get It Out Of My Head (ELO Cover)

ELOで電車男のあの曲しかマジメに聴いたことないのでエラそうなことは言えないが、良い曲だねぇこの曲。ビートルズ的なメロディが印象的。

3. Conquistador (PROCOL HARUM Cover)

それにしてもプロコルハルムが好きなんだなぁこの人たち。それだけ。

4. Goodbye Yellow Brick Road (ELTON JOHN Cover)

エルトンジョンも自分の守備範囲外なんだが、聴けば、あぁ聴いたことあるなぁっていう、多分名曲なんだねエルトンジョンの。この曲聴くのクセになりそう。良い曲だ。

5. Tin Soldier (SMALL FACES Cover)

完全に守備範囲外。ゴメンナサイ・・・。

6. Sylvia (FOCUS Cover)

フォーカスってテクニカルなのと、ヒョーロロロロロロみたいな曲の印象しかないんだけどこんなメロディアスな曲があったんだ。こんど原曲聴いてみるか。

7. Indiscipline (KING CRIMSON Cover)

誰の趣味でこの曲を選んだのか(笑)。他にあるだろうって(笑)。マイクポートノイは語るようなヴォーカルが好きなのか?

8. Night In The White Satin (THE MOODY BLUES Cover)

サテンの夜を聴くと、もうこれしか思い浮かばない、ジョンウェットン大先生のソロアルバム "ROCK OF FAITH" 収録のNew Day。しょうがないでしょジョンウェットンの大ファンなんだから。

以上、ボーナスCDも公式盤品質で楽しめます。最後にボーナスDVDにも触れておくと、メイキングドキュメンタリー、長い、長いとにかく。80分超えで字幕無いから長いのなんの。字幕あると嬉しかったなぁ。折角日本盤なんだから。それが今回の国内盤では残念。

さて、メンバーがトランスアトランティックに本気であるならば初来日があってもいいのでは? 期待してまっせぇーー。

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