2017年5月18日 (木)

【Short Review 29】ザ・ミュート・ゴッズ 「緩歩動物は地球を受け継ぐだろう」(THE MUTE GODS "TARDIGRADES WILL INHERIT THE EARTH")

ここんとこ、仕事はまぁ落ち着いているけどプライベートな部分の所用がエラい忙しくて、それはそれで充実感もあるんだけど、ふと気が付くと疲れがたまっているのか例によって腰に痛みと言うか張りを感じたり。ようやく所用も無い久しぶりの完全休日のはずだった今日、ブログ記事を3つくらい一気に書いてやろうとか企んでいたのに、あぁ~、結局オカンに買い物の運転手兼荷物運びを急に頼まれて結構な時間を費やしてしまった。夏に向けてプチトマトやゴーヤを家庭菜園で栽培するのに苗と土をどっさり買い込むからと言うので、まぁ自分も食べたり弁当に入れたりするわけだから知らん顔も出来ない。なので記事3つはあっさり断念。今日はチャチャっと済ませそうなショートレビューを1件だけ。

どこへ向かおうとしているのか、エキセントリックな自身の写真をSNSにUPして楽しんでいる当代随一のベーシスト、ニックベッグスのプロジェクト、ザ・ミュート・ゴッズがデビュー作を発表したのが昨年2016年、わずか1年のインターバルで早くも2ndアルバムを出した。

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今回は国内盤で買ったんだけど、それにしてもこの邦題「緩歩動物は地球を受け継ぐだろう」、イイんだけど漢字の読み方が分かんねぇ、って思っていたけど無事にワープロで変換出来た。「かんぽ」で「緩歩」ってことでイイんだろ?(笑)。間違ってたらご指摘くださいませ。

今回もハケットバンドの同僚ロジャーキングのプロデュースで、ドラムはマルコミンネマン。メンバー構成的にどうしても食指が動いてしまう。内容は、前作を参考にして言うと、よりダークでヘヴィになった印象かな。メロディは悪くないけど、ヴォーカルにエフェクトをかけて、敢えて混沌とした雰囲気を出している感じがワザと狙ってる感がある。そうかと思うと後半でいきなりお花畑系のメロディやアレンジが登場して、私の貧相な感覚ではフォローしきれない(苦笑)。

というワケで前作に続いて、今回も通しで数回聴いたんだけど、どう表現していいのか分からない音楽を提示してくれたニックベッグス、普段のBGMとしては使えない(苦笑)。めっちゃ体調が良くて、時間があって、気が向いた時に改めてじっくり聴かなければならないサウンドである(なんじゃそら・・・)。

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2016年4月 3日 (日)

【Short Review 19】THE MUTE GODS "DO NOTHING TILL YOU HEAR FROM ME"

昨年後半にインフォがリリースされた段階から最注目だったTHE MUTE GODS、1月発売時点で購入済だったんだけどようやくブログに載せます。

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スティーヴンウィルソンやスティーヴハケット、更にはライフサインズの1stアルバムにも名を連ねていた凄腕ベース兼スティック奏者、ニックベッグスの最新プロジェクト。鍵盤&プロデュースでハケットの相棒ロジャーキング、ドラムはマルコミンネマンと、顔ぶれだけで期待せずにはいられない新プロジェクトである。

早々にburning shedで予約しておいたので、予約特典でニックベッグスのサイン入りポストカードがオマケで付いてきた。

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最近はプログレ界隈で有名だけど、80年代からの洋楽のファンであればカジャグーグーのフロントマン(リマールじゃない)だったあの人か、ってなると思う。当時のPVとか観るとスティックを演奏しながらリードヴォーカルを取っていて、アイドルっぽい売り出され方だったと思うんだけど実際にはなかなかの実力者だったんだなと意識を改めなければならない。私も80年代当時はMTVとかで観た覚えはあるけど正直それほど好みでは無かったが・・・。

そして今回の作品、顔ぶれだけで物凄い期待はしたんだが果たしてどのようなサウンドを提示してくるのかは全く想像つかなかった。どうしてもそのキャリアからカジャグーグー的なポップな要素が有りつつの、ハケットバンドのロジャーキングのプロデュースという事実からやはりシンフォニックかつ分かりやすいプログレ要素もあるのかな、みたいな身勝手な期待があった。実際に聴いてみたところ、既に何度も聴いているのだが、私の音楽的ヴォキャブラリーでは何ともすっきりと表現しがたい音楽であったというのが第一の印象、なのでブログに記事書くのもこんなに遅れたのである。

まず1曲目、本作のリードトラックでもあるタイトル曲Do Nothing Till You Hear From Me、ポップではあるがベースがベンベンなっていてひねくれポップとでもいうか、そんな感じ。2曲目Prayng To A Mute Godも同じ印象だがロジャーキングプロデュースだけあってシンセの色付けがカラフルである。3曲目Night School For Idiotsはミディアムテンポの叙情的なバラードっぽい曲。と、ここまではまずまず期待通りというか、ニックベッグスのヴォーカルも3曲それぞれに歌い方を変えていて、さすがはカジャグーグーのリードヴォーカリストを務めただけのことはあると思えた。しかし4曲目の若干ダークな色合いの曲辺りからちょっと面倒臭くなってきたぞ・・・(笑)。その後は様々な音楽性が混然一体となって繰り広げられる。サイケに感じたり、浮遊感があったり、尖った印象があったり、スティーヴンウィルソン的な冷感と浮遊感のあるプログレ的であったり・・・。

全体として一言ではカテゴライズの難しい作品だなぁってのが感想になってしまう。ニックベッグスの頭の中にある混沌とした音楽性そのものをそのまんま絵画のスケッチをする如く音楽として書き留めて、なんとか商業ベースに乗るようにロジャーキングに纏めてもらいました、というようなそんな感じ。ほんとこういうの、なんて言ったらいいんだろう、ポップな要素もあるんだけどキャッチーではないし、シンフォプログレでも無ければジャズロック系でも無い、全編アヴァンギャルドっていうほどの尖り方でもないし。

もしかして、ポストロックとかポストモダンとか言うと少しは評論として納まりは良くなるんだろうか。いやはや文章に言い表すには難しい作品だった。

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2016年2月28日 (日)

【Short Review 16】スティーヴン・ウィルソン 「4 1/2」 (STEVEN WILSON "4 1/2")

これまた1ヶ月以上前から取り上げようと思ってて、ドリームシアターの新譜を聴くのに一杯一杯で後回しになっていた逸品。スティーヴンウィルソンの最新ミニアルバム。名作となったソロ4作目「ハンド・キャンノット・イレース」と来年2017年あたりに予定されているソロ5作目の間を埋める本作という事で、タイトルも「4 1/2」という、ある種分かりやすい命名。

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ジャケのデザインが斜めの4本線と半分の線がくり抜かれたスリップケースで、その奥に前作をイメージさせる写真のデジパックが入っているという、シンプルに凝ったジャケが何気に個人的に気に入っている。

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ハンド・キャンノット・イレースのレコーディングセッション時に作られた未発表4曲と、その前のソロ3作目「レイヴンは歌わない」のレコーディングセッションからの未発表1曲、それからポーキュパイントゥリー時代の曲の2015年ソロバンドでのライヴヴァージョンにスタジオで手を加えた1曲、以上計6曲に国内盤はボーナストラック1曲で計7曲。トータル40分ではあるがどれもしっかり作り込まれた楽曲群で今まで未発表にしていたのが勿体ないような、十分に新作と言ってしまっても良いような作品である。イメージとしてはやはり前作までの90年代ブリットポップを通過したようなスティーヴンウィルソン流のプログレ作品。いやあまりプログレプログレと言わない方がイイのかもって気も最近している。独特の冷感もあるし、ギターを掻き鳴らす風の熱さもあるし、アンビエントな空気感もあるし、曲によっては女性ゲストボーカルもあるし、サックスソロも登場するし、自らのやりたい音楽を表現するのに、小さく纏まらずにそのセクションごとにベストと思う表現を贅沢に使っているような、そう、この人の作品はまことに贅沢である。ミニアルバムと言っていてもこんなに贅沢な印象を受けるのだからその創作意欲という意味ではまさに70年代を切り開いてきたプログレバンドに匹敵すると言えよう。

3作目と4作目のレコーディングセッション時の録音に一部2015年に録音を加えたようで、参加ミュージシャンがマルコミンネマン、ニックベッグス、ガスリーゴーヴァンといった私お気に入りの、その時点で核となっていたメンバーに加えて2015年ツアーから参加していたデイヴキルミンスターもギターをオーバーダブしている。このメンバーの使い方もとにかく贅沢。現在の英国ロック界においてコレだけの凄腕どころを集めるところがやっぱり贅沢で、それだけ求心力があるという事なんだろう。

ちなみに国内盤ボーナストラックで収録されたラザルスって曲、一番気持ちよく聴ける優しく暖かみのあるメロディで、スティーヴンウィルソンのソロ曲とは色合いが違うなと思ったら、これもポーキュパイントゥリー時代の曲の新録だそう。私、ポーキュパイントゥリーは暗そうなイメージでずっとスルーしていたんだけれど、もしかして他にもこういう曲あるのかな? もしそうだとしたらポーキュパイントゥリーも聴かなきゃなと思うんだけど・・・。

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2016年1月27日 (水)

【Short Review 13】スティーヴン・ウイルソン 「ハンド・キャンノット・イレース」 (STEVEN WILSON "HAND CANNOT ERASE")

こんなこと言ったら北国に住んでる人に怒られるかも知れないが、今回の大寒波には参った。川崎や横浜に住んでた時も、京都亀岡に住んでる今も、どっちも冬は冬やし寒いに決まってるんだが、朝起きたらお湯が出ないのが2日も続くともう勘弁してくれよってなる。湯沸かし器が凍結してたみたいだが、川崎横浜の時はどんなに寒い時でもそんなことは一度も無かった。気温氷点下5度とかが2日続いたら、今日の朝の気温0度とか1度くらいだと暖かく思えてしまうのが我ながら不思議なもんである。

それで本題、スティーヴンウイルソンの「レイヴンは歌わない」もそうだが、続いて取り上げる「ハンド・キャンノット・イレース」もなんかやはり文章に書こうとすると躊躇する。凄く気に入ってるのは確かなんだけど。全曲レビューしたいくらい気に入ってるんだがとりあえずショートレビューで流す。

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本作は、プログレに真正面から向き合った前作「レイヴンは歌わない」から比べて、更に聴き易くなっている。レコーディング参加メンバーもマルコミンネマン、ニックベッグス、ガスリーゴーヴァンを含めた前作同様の最強のメンバー編成。またストリングスアレンジではなんとハットフィールド&ザノース等でお馴染みのデイヴスチュアートも参加。3 Years Older から Hand Cannot Erase はプログレ的曲構成ではあるものの、ギターを掻き鳴らす90年代のブリットポップのような躍動感を感じる。この躍動感は前作ではあまり感じられなかった。前作の冷感からここではむしろ陽光を感じさせる。続く Perfect Life はスローで浮遊感のある美しい曲で暖かいと言うよりは薄日が差す儚さが何とも言えずクセになる素晴らしさ。こういう曲を聴くと音楽に大切なものは何なのかを考えさせられてしまう。演奏技術や複雑な曲構成や前衛性といったプログレファンが好みそうなものが、どうでもよくなるというか、ピアノの一音一音が胸に染みわたるし、イマジネーション込みでそういう感性に訴えるものが表現できるところがスティーヴンウイルソンの実力や表現力や器の大きさを物語っているに違いない。「プログレ」という範疇を超えている、「プログレ」と言う枠には収まらない普遍的なアーティストとして認めるべきであるとさえ思ってしまう。Routine では出だしが前作で顕著だった冷感を湛えていて個人的には厳しいかなと思ったのだがコレも途中から熱い展開となり分厚く盛り上がる。13分の大曲Ancestralにおいては静動含めた展開が繰り広げられ、特にここで聴けるガスリーゴーヴァンのむせび泣くようなギターソロは名演の誉れも高き演奏と個人的には言い切ってしまいたい。

とにかく全体的に前作に比べて冷感が後退し、プログレとしても捉えることは出来るだろうが、ロックの熱さが感じられる。ここに至っては紛れもなく誰にでも勧められる名作となった。BGM的に流して聴くのではなくじっくり聴けば聴くほどその素晴らしさがより深く味わえる。サッと1,2回聴いただけでは本作の良さは分からないだろう。ほんとはもっとじっくりレビューしたいところだが、次々と注目の新譜もあるもんだからそっちも聴きたいしで、この辺でご勘弁を。

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2016年1月19日 (火)

【Short Review 12】スティーヴン・ウイルソン 「レイヴンは歌わない」 (STEVEN WILSON "THE RAVEN THAT REFUSED TO SING (AND OTHER STORIES)")

キングクリムゾンやイエスその他レジェンド系のプログレ作品のリミックス職人としてすっかり有名になったスティーヴンウイルソン、しかし実際には現代の英国を代表するミュージシャンとしてもその注目度は増すばかりである。拙ブログでも何度かリミックス職人としての部分で名前を出してきたが、いよいよ彼の作品に触れていきたい。

正直言うと私はポーキュパイントゥリーは全く持ってなくて、スティーヴンウイルソンのソロ作品もソロ3作目となった本作「レイヴンは歌わない」からのファンである。

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以前からポーキュパイントゥリーと言う名前もスティーヴンウイルソンと言う名前もはっきりと注目のミュージシャンとして認識していたが本作において、様々な媒体で触れられた評論として、アランパーソンズをプロデューサーに迎えてスティーヴンウイルソンがプログレッシブロックに正面から向き合った傑作、というような文言があり、オッとこれはさすがに聴かなければと言う事で購入したのであった。

聴いてみて紛れもなく傑作であると私自身も認識できたのだが、それをブログで言葉にして言い表す自信が無くて、今までずっとブログでは取り上げられなかった。今も何をどう気に入っているのか表現する自信が無いのだが、そうこうしている間にまたもや新作ミニアルバム「4 1/2」が発売され、既にフラゲして手元にあるもんだからもうショートレビューと言う形でもイイからレイヴンから取り上げておこうというワケ。

それでこの「レイヴンは歌わない」、レコーディング参加メンバーがこれまたこの世代の超強力メンバーで固めている。ギターがガスリーゴーヴァン、ベースがニックベッグス、ドラムがマルコミンネマン等々。1曲目のルミノールからいきなり聴く者の襟を正させるかのような隙の無い10分超えの大作。他の曲もそうだが何と言ってイイんだろう、商業的な目線があまり感じられず、正統派プログレなんだが余計な装飾が無い。マルコミンネマンのキレのあるドラムと並行して走るリードベースとも言うべきニックベッグスのベースの剥き出しの音像が素晴らしい。バカテクギタリストとしても知られるガスリーゴーヴァンの押し引きをわきまえたギターもスティーヴンウイルソンの統制によって非常に効果的に生かされていると思う。

各種媒体で目にした評論では言うに事欠いて、と言うと失礼だが恐らく他に紹介文として評論のしようがなかったのであろう、キングクリムゾンとピンクフロイドを足した感じ・・・、みたいな言い方で、それはそれでなるほどな、とも思った。あえてそこら辺のレジェンドと比較するなら私の感触としてはクリムゾンほど圧が無い、フロイドほど商業ベースに乗せても通用するほどのキャッチーさも感じない。ロックの熱さが無くて、むしろ冷感を伴った透徹したピュアな音楽表現が正統派プログレの姿を借りてなされている、そんな感じ。だから気楽に聴けない。なんか時間のある時に体調を整えて正座して聴きたいような、それほどの力作である。ある意味でこの冷感がもしかすると日本人には合わないかも知れない。英国ではロイヤルアルバートホール公演をソールドアウトにするほど盛り上がっているが、そう簡単に来日公演が実現しそうにない気がする。

なんかブログに書いてみてやっぱりまとまりがないというか、傑作なんだけど何を推しにして書いていいのかが難しい。逆にその、何かに例えるのが難しいところが、スティーヴンウイルソンの近年の作品における唯一無二の存在感を醸し出しているのかも知れない。その唯一無二の雰囲気を感じるから、私としてはこれは目を離せないし、更にこれからリスナーをどこへ連れて行ってくれるのかと言う期待をも感じさせてしまうのかも知れない。

これはバーーッと聴きまくってそのうち飽きるという代物ではなく、実は長く聴くことのできる、結果として歴史に残る傑作として日が経つほどに存在感を増して行くかも知れない。

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