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2016年7月24日 (日)

アンダーソン/ストルト 「インヴェンション・オブ・ナレッジ」 (ANDERSON/STOLT "INVENTION OF KNOWLEDGE")

今年ほどイエスの「海洋地形学の物語」が注目を浴びる年もなかなかないだろう。既に現行イエスの夏のUSツアー及び11月の来日公演では海洋地形学の1曲目「神の啓示」と4曲目「儀式」の完全再現が出し物としてアナウンスされた。また先日ようやくスティーヴンウィルソンによるイエス作品のリミックスシリーズとして海洋地形学が近日リリースされることもアナウンス。リミックスされた海洋地形学がどのような新生面を感じさせてくれるかも楽しみだが、何よりボーナストラックとして、74年4月の欧州ツアーから「儀式」のライヴが収録されるのが個人的には大注目である。74年4月といえばリックウェイクマンが第一回目(笑)のイエス脱退を果たす直前であり、そのリックが演奏する海洋地形学のライヴが公式発表されるのも初めてである。

また、その注目の浴び方も様子見しつつの静かな注目ってところが、海洋地形学に対するファンの立ち位置を物語っているようで面白い。決して大盛り上がりでは無いのである。やはり正直なところ、海洋地形学が好きで好きでしょうがないっていうイエスファンがなかなか居ないのだろう。イエスのある一面を拡大させたシンフォニック傑作でもあり問題作でもあり、しかしファンの立場からの聴感上の問題として、眠い、冗長である、といった評価になってしまう。かく言う私も、ジョンアンダーソンがスティーヴハウをパートナーにして完全にイエスをコントロールした、ジョンアンダーソンの音楽的大冒険アルバムとして、作品としての存在感の大きさは感じるものの、じゃあ聴いてどうかといえば途中で寝落ちすることも多い(苦笑)。

今回は海洋地形学のレビューを書きたいわけでは無いのでこの辺で置いとくが、海洋地形学が今年注目を浴びるもう一つの要素が、今回取り上げる掲題のアンダーソン/ストルトのコラボ作品である。

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数か月前に突如としてジョンアンダーソンと、フラワーキングスのロイネストルトのコラボ作品がリリースされることがアナウンスされ、その組み合わせの意外さも相まって、いつの間にこの2人が?って思ったものだった。2年くらい前から時間をかけて極秘裏に制作がすすめられてたようで、ようやく表に出せる状態にまで持ってこれたのだろう。二人の相性としては最初は全く想像がつかなくて、リリースがアナウンスされて短いサンプルを聴いた段階で、これは面白いかも、と思って購入する気にはなったんだが、リリース仕様がどうなるのか色々と考え過ぎてるうちに少し出遅れてしまった。安全策でEU盤から1ヶ月遅れの国内盤を予約したんだが、EU盤を聴いた方々の感想を目にするうちに国内盤を待ってられなくなって、やっぱりEU盤も欲しくなり、とある時間のかかりそうなサイトで注文したんだが、案の定すぐには送られて来ず、結局国内盤の方が先にウチに届くという、何がやりたかったんだ私は?的な展開となってしまった。パッケージもEU盤のデジパックに対して国内盤はプラケと言うことで、両方揃ってからブログ記事書こうと思ったけどもうイイ。本日現在もEU盤は届く気配が無いので、収録内容は変わらないから国内盤聴いて記事UPである。

全曲レビューまではしないけど、自分なりに感じた点を掻い摘んで書いていく。当初、大作ばかり全4曲とアナウンスされた作品構成は、実際にはデジタル時代らしく少し細かくトラック分けされて全9曲として構成されている。しかし大曲4曲という枠組みは変わらないしジャケの記載にもその辺は強調されている。

さて、大作その一、Invention of Knowledgeの3曲にトラック分けされたトータル22分を超える曲は、もうこの最初の5分で、おぉー!まさにイエスサウンドが甦ったやん!と感じる人が多かったに違いない。掴みはバッチリである。しかしそれは往年のイエスサウンドが甦ったというのとは少し違うと思う。イエスサウンドではなく、イエスの海洋地形学のようなサウンド、と言うことに違いない。少なくとも私の印象はそうである。これは2曲目、3曲目、4曲目と聴き進めるほどにそう感じる。実際に海外では海洋地形学や、ジョンアンダーソンの1stソロのサンヒローを引き合いに出して売り文句としているようだし。

何ていうんだろう、ジョンアンダーソン独特のマジカルヴォイスと、ギター、鍵盤、ベースのフレーズの絡ませ方が、モザイクを隙間なく綺麗に組み合わせるかのような素晴らしい音の構築感があって、複合するリードパートのような面影まで感じさせてくれるところがファンを歓喜させる理由だろう。しかしイエスサウンドそのものとまで個人的に言えないのはやはり、氷の上を滑るかのような滑らかな疾走感が無いところが、イエスサウンドではなく、イエスの海洋地形学のようなサウンド、と感じる理由である。そしてその後は聴き進めるほどに、美しいシンフォサウンドではあるものの、ぼんやり聴いていると聴き流してしまったり眠くなってきたりするヒーリング効果まであって、この感じが海洋地形学を聴くときの感じと同じである。また一部のヴォーカルフレーズに重ねたコーラスは、それこそまさにジョンのソロ、サンヒローを思い起こさせる。

ジョンアンダーソンによる音楽的大冒険であったイエスの海洋地形学やソロ1stのサンヒロー、これらを見事に2016年にリフォームしたかのような音の構築感は、ロイネストルトが凄く頑張りましたーーー!ってことだろう。多分ジョンアンダーソンがイニシアチブを取ってソロ作品として制作すると、音の構築感がない、失礼ながら聴感上は退屈な作品になった気がする。イエスのファンでもあったロイネストルトだからこそ、あの音の構築感をイエス的なるものへの愛情を持って甦らせることが出来たんだと思う。トラック6のEverybody Heelsでは、そのロイネストルトがフラワーキングスでのギターソロを思わせる素晴らしいフレーズのギターが聴ける。

昔はアイデアを出したジョンアンダーソンを、優秀な楽器隊が自分たちの個性を割り込ませながらアレンジし、優秀なプロデューサーが制作する、その組み合わせでこそ実現したのがイエスサウンドであった。今回の作品は、ジョンアンダーソンのマジカルヴォイスを最高に引き立たせるために何が必要か、それを愛情持ってよくよく理解していたロイネストルトが作り上げたと言っても過言ではない。だからこそ結果として、よりジョンアンダーソン色の強いイエスサウンドとしての海洋地形学を思わせるサウンドになったんだろう。

海洋地形学を楽しくした感じ、ツイッター的に一言で言ってしまうとそういう事になる。

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